【1代目ネゥト】61~65話

neuto61【第61話】
15日。今日はウルグでお祭りがあるらしいの。特に予定もないし、私はリムウルグに行くことにした。
ここでは性格判断をしてくれるみたい。私は「とても積極的な人」と言われたわ。まあ、そうだとは思うけど。
次はバハウルグへ。ここでは占いをしてくれるんだって。
「バスの浜で願いを叫んでみよ。願いがかなう……かも。」
なんだかハッキリしない言い方ね~
………
……思えばあたしはいつもバスの浜で走ってたわ。『いい男見つけてやる!!』とか『素敵な恋人が欲しい!!』とか叫んでたし。
……叶ったってことなのかな?
…………そういえば、アルヴィンも嫌なことがあるといつも浜で走ってたって言ってたわよね。だからよく浜で会ったし。
アルヴィンはあたしのことを想う気持ちで悩んで………あたしと恋人になりたい……とか、叫んだりしてたのかな?
「………っ!!!!」
なんか急に恥かしくなってきた!!!もう考えるのはやめよう!!
次!!!ガアチ行こう!!!
「とても異性に好かれる名前ですね。もて過ぎて困るほどでしょう。」
ぐはっ!!!………確かに困ってるわ……(汗)
あの集団に毎日追いかけられて、いい加減疲れてきたし。
でも、褒められるのは素直に嬉しいかな。


neuto62【第62話】
17日。昨日朝一番でアルヴィンに誘われて、今日はデートvv
またもや待ち合わせにはアルヴィンの方が先に着いてた。一体何時に家出てるのよ?
「アルヴィン!!おはよ♪」
「おはよう、ネゥト。はい、お手。」
「うんv」
ぽぷっとアルヴィンの左手に右手を乗せてからはっとした。
「ちょっとアルヴィン!!!あたしは犬じゃないんだからね!!!」
「あはははは!!!ちゃんとできたね。偉い偉い。」
「も~~~!!!」
どうもあたしはいっつもアルヴィンにからかわれているような気がする。
ずるいよ。「お手」した手をしっかり繋いで歩き出すから、あたしはそれに負けてしまうじゃない……
「ネゥトはいつも素敵だね」
「えっ!!何よ急に!!///」
「いつも夕方会いに行くと男性陣に囲まれているだろう?それだけ魅力的だってことだけど、僕はちょっと不安になるよ。そんなネゥトをつなぎ止めておく自信はないから……」
あたしは頭がかーーっと熱くなるのを感じた。
「何言ってんのよ!!!アルヴィンだってすっっっっごく素敵だよ!!!このあたしがね、毎日アルヴィンのことばっか考えてるのよ?それに初めて会った時だって格好いいって……」
一瞬目の前が暗くなった。
気がつくとあたしは、アルヴィンの胸の中にいた。その腕が小刻みに震えてるのを感じて、胸の奥がキュウっとした。
「バカ……」
想いが伝わるように、あたしはアルヴィンを抱き締め返した。


neuto63【第63話】
18日。今日もアルヴィンとデート。
アルヴィンってば毎日かかざす誘いにくるんだもの////
「ネゥト、今日はバスの浜に行こう。」
「うん!!れっつご~♪」
ーーバスの浜は、訓練する人もいなくて、静かに波の音を立てていた。
「ここに来るといろいろ思い出すね。」
「うん。あたしたちが初めて会った場所だしね。……他にも、たくさん。」
ここでは苦しい想いを巡らせてばかりだったけど、でも……
「アルヴィン。いいものあげるから、目、つぶって?」
「うん……」
あたしはアルヴィンの首を引き寄せて、そっとキスをした。
「ネゥト……っ////」
「これから、楽しい思い出たくさん作ろうね。」
「………そうだね……」
あたし達は寄り添って、ぼうっと海を眺めていた。
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ーーー仕事が終わり、家に入ろうとしたその時、後ろから声をかけられた。
振り向き、その姿を見た瞬間、あたしは恐怖に似たような感覚に包まれた。


neuto64【第64話】
「ゴタ……」
「ネゥト、久しぶりだね。元気にしてた?」
「う…うん。」
恐い。
あの日から、顔を見ることさえできない。できることならもう会いたくなかった。
……あぁ、あたしってこんなに弱い人間だったんだ。
体がカタカタと震え出してくる。
ーーーアルヴィン……助けて………!!!
「ネゥト、明日デートしよう。」
「…………あ、あたし………」
「ん……?何?」
震える手をぐっと握りしめ、お腹に力を入れる。
「あたし、あなたより愛する人が……できたの……」
「……………え?」
「だ、だから、別れましょう。……ごめんなさい。」
しばしの沈黙が流れる。
ゴタの手が、わなないているのが視界に入った。この後どうなるのかと考えると、恐くて体が動かなかった。
「ふん!!!僕だって別れようと思ってたところだよ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、体中の震えが止まった。


neuto65【第65話】
「な……なんだと~~?それじゃ、デートになんか誘いに来んなーーー!!!!」
ボクッ
あたしの放ったヘヴィブルースがゴタの左頬にヒットした。
「こっちは罪悪感で押し潰されそうになってたっていうのに、言うにことかいてなんじゃそりゃーーー!!!!」
あたしが再びゴタに掴み掛かろうとしたそのとき、両肩を後ろから押さえられた。
「ストーーーップ!!!ネゥト、やめろ!!!」
「アルヴィン!!止めないでよ!!!あ、あたし、すっごく悩んだんだよ?なのに……」
アルヴィンに頬を拭われて、大量の涙が流れていたことに気が付いた。
「そうだな……たくさん悩んだよな。……でも、今はきっとゴタさんの方が傷付いてるはずだよ。」
「え……?」
振り向くと、頭に雲を付けたゴタが、トボトボと歩いていた。
「振られて、その勢いでつい言ってしまっただけなんじゃないのか?」
「……………」
『ーーゴタ、ごめんなさい。あたしにはやっぱりアルヴィンが必要みたいです。あなたも、もっと優しくて芯の強い、いい人を見つけて下さい。』
アルヴィンの胸に顔を埋めながら、あたしはそんなことを想った。
「まったく……僕は猛獣使いにでもなった気分だよ。」
「わ~るかったわね~!うが~~っ」
そうして夜は更けていった。

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